Google Apps Script のテストにつかうウインドウ

May 19 2012

Google Apps Script のテストで改行を含む文字列をチェックしたいときにはテキストエリアを1つだけもつポップアップウインドウを使うとよいかも.Browser.msgBox() は改行とスペースが省略されてしまうので...なんか他にいい方法あるのかな

function myMsgBox(s){
   var ss = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet();
   var app = UiApp.createApplication();
   var t = app.createTextArea()
          .setValue(s)
          .setWidth('480px').setHeight('290px');
   app.add(t);
   ss.show(app);
}

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論理と表現を分離して Googleフォームの自動返信を少しだけ使いやすくする

May 18 2012

今日はGoogleフォームの自動返信の文面をプログラミングを知らない人にも簡単に書き換えられるようにする方法を考えます

背景

Google Docs (最近はDriveになっちゃいました)を使うとお手軽にウェブフォームなどを作れるので,すでに使われている方も多いと思います.低予算で済ませたいプロジェクトなんかの場合,大学の職員さんにも利用をおすすめしています.

デフォルトの状態では少し使いづらくて,例えば確認メールを自動返信する機能がないとか,普通のサイトにはあるよねって思うことがなかったりして,不便に感じることが多々あります.しかし,Googleさんはさすがに偉大でして,ほとんどの問題には解決策があります.例えば,自動返信メールの場合,Google Apps Script を使えば実現することができます.

基本的には,送信というイベントをトリガーにして情報を取得します.以下2つは参考サイトです.データの取得の考え方が少し違いますがやっていることは同じです.

問題点

で,これらの解法が気に食わなかった点が何かというとJavaScript の基本的な書き方が分からない人は,返信文面の編集すらできないということです.「こういうスクリプトを書けばできますよー」とJSを書けない誰かに説明して,「やっぱりメールの文面をかえたいです!」って言われたときにJSの分かる人が書き換えてあげなければなりません.だって,行末のセミコロンの意味とか,\n が改行文字だということを知らない人にとっては,ソースを直接書き換えるのは恐怖でしょう.エラーが起きたらお手上げでしょう.そういう状況を作ってしまうのはよくありませんね.

というわけで,一度設定してあげればそれ以降は(基本的には)誰にも聞かずに文面やCC,ReplyTo アドレスを編集できるのが理想的です.

解法

ソースコードの中に文面情報を持ってしまうと,どうしてもJavaScript (Google Apps Script)のルールで書かなければならないので,外側に出します.ここでは,Google Docs のドキュメントにテンプレート情報を保存する方法を採用します.ドキュメントファイルは,Document Class として簡単に読み込むことができます.

まずは,下のキャプチャのようなウェブフォームを作ります.今回はデモなので名前とメールアドレスだけを聞く単純なフォームにします.もっと実用的なフォームでも考え方は同じです.

次に,下のキャプチャのようなGoogleドキュメントを書きます(枠と枠内右上のキャプションは説明のために付加してます).

このテンプレートは,ヘッダ・ボディ・メモの3つのエリアに分けられていて,それぞれのエリアは === (3つ以上連続するイコール)で区切られています.

  • 赤枠で囲まれたヘッダ部分に,送信時の『subject (題名)』『name (送信者名)』『cc』『bcc』『replyTo』を設定します.題名についても,フォームの入力情報を反映させることができますが,今回はやりません.
  • 青枠で囲まれた部分が,メールの本文に当たる部分です.{{Name}} および{{E-mail}} と2重の波括弧で囲まれた部分を,フォームの対応するテキストボックスに入力された情報で置き換え,それを本文として自動返信します.(Timestamp も入れてしまっていますが,これはDocsの言語設定によって名前が変わるので注意してください)
  • メモ部(2つ目の === 以降)は完全に無視しますので,何を書いても大丈夫だと思います(たぶん)

このようにテンプレートを記述しておけば,JavaScript のルールを意識しなくてもメールの文面を編集することができますよね?どうでしょう?

ソース

じゃあテンプレートの適用はどうするのということで,とりあえず次のようにやりました.もっとうまい方法があれば教えてください

2行目に指定しているGoogleドキュメントのIDはドキュメントを開いたときのURLを見れば分かります.メールアドレスが格納される列の名前だけは特別扱いで,3行目にグローバル変数として指定しています.

42行目以降の loadTemplate() 関数は,テンプレートファイルを取得して,ヘッダ部分とボディー部分を取り出します.

取り出した情報を使って,35行目のMailApp.sendEmail()に必要な情報を作っています.コア部分は,22,23行目の2重波括弧で囲まれたキーワードを置き換えるところです

// Doc ID of the template file
var id = "koko_ni_id_wo_iretekudasai";
var mailCol = "E-mail";

function onFormSubmit(e){
    try {
      var ss = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet();
      var r = ss.getLastRow();
      var c = ss.getLastColumn();
      var rg = ss.getDataRange();

      // Processing the body part
      var t = loadTemplate(id);
      var body = t.body;
      var v = {};
      for ( var j = 1; j <= c; j++ ){
        // Replacing the template keyword into the input value
        var cname = rg.getCell(1, j).getValue();
        var entry = rg.getCell(r, j).getValue();
        v[cname] = entry;

        var re = new RegExp("{{"+cname+"}}", "g");
        body = body.replace(re, entry);
      }

      // Processing the header part
      var mail = v[mailCol];
      var subject = t.head.subject;
      var opt = { cc: t.head.cc,
                  bcc: t.head.bcc,
                  replyTo: t.head.replyTo,
                  name: t.head.name };

      // Sending the message
      MailApp.sendEmail( mail, subject, body, opt );
    } catch (e) {
        // When exception raised
        MailApp.sendEmail(Session.getActiveUser().getEmail(), "Error report", e.message);
    }
}

function loadTemplate(docId){
  // Load your template doc file
  // docId = Google Docs Document ID
  // Find it from doc's URI
  var t = DocumentApp.openById(docId).getText();

  // Comment out strings after double slashes
  t = t.replace(new RegExp("//.*\n", 'g'), "");

  // Body part is placed between a pair of lines with more than 3 consecutive ='s
  var tsplit = t.split(/===+.*\W+/);

  // Retrieving the header part
  // that should be placed before the first ===
  var head = {};
  var lines = tsplit[0].split(/\n+/);
  for ( var i in lines ){
    var line = lines[i];
    if ( null != line.match(/(\w+)\s*=\s*(.+)$/)) {
        head[RegExp.$1] = (RegExp.$2).trim();
    }
  }

  // Retrieving the body part
  // that should be place between the firs and last ==='s
  var body = tsplit[1];

  return { head: head, body: body};
}

結果

こんな感じになります.うまく行ってそうですね

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Dei (2011) “Quality Of Labor Markets In A Developing Country”

May 04 2012

market-quality.net には関連研究の紹介も書きましょうなどと言ったものだから,自分でも書かないとと思い書いてみました.

神戸大学の出井先生に教えていただいた出井先生ご自身の論文です.労働市場の内生的な高質化のプロセスを投票タイミング,教育投資と国際貿易の観点から分析されています.

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Voidy Options

Apr 23 2012

Voidy というWordpressのテーマにしてみたんだけどレスポンシブじゃなかった。残念です。

このテーマはサイドバーの一番上に固定テキストを入れられるところがあるのだけど(Voidy Options → Sidebar Text)ここに顔写真を設定しようと思ったらWP HTTPS プラグインのせいだと思うのだけれど, http → https に勝手に変更されてしまう。僕の顔写真は暗号化されるべきですかね。

(相対パスで指定したらいまのところ上手くいってるみたいだけど,これは使いづらい。なんとかならんもんかな)

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公開されちゃってるWordPress環境をローカルにコピーしてみた

Apr 19 2012

※いつものように非専門家向けです

WordPress のテーマの,それも style.css とか,functions.php を少し弄りたいだけだし,どうせ見てる人なんてあんまりいないからと思って,エイヤっとサーバーに置いちゃうような怠慢アマチュアはきっと僕だけではないでしょう(僕だけかな?)スタイルファイルとか無害なものだときっと問題ないだろうし(?)

それでも大々的に宣伝を始めてしまったら,やっぱり心苦しくなるもので,ローカル環境をちゃんと作ってみました.実際にデータは投入されはじめているので,まったく白紙のデータベースとつないでしまわず,現状の環境をまるごとコピーということをやります.

目的

  • 原稿環境をまるごとコピー
  • できるだけめんどくさくない感じで

まずやること

  1. サーバー:Wordpressのプログラムをまるごとダウンロード.C:\WHEREVER-YOU-LIKE におく
  2. サーバー:phpMyAdmin でデータベースをまるごとエクスポート
  3. ローカル:1を入れたフォルダでPHPが実行できるように(個人的にはVertrigoServをおすすめ)
  4. ローカル:phpMyAdmin でテーブルを作って,そこに2をインポートする
  5. ローカル:config.php にデータベース情報を書き込む.VertrigoServ を入れてすぐであればホスト名 localhost, ユーザー名 root パスワード vertrigo になってるはず

通常のサーバーの移行と同じようにやればよいということですね.ダウンロードしてアップロードする.基本はそれだけですね

問題点

  • データベース接続エラーというのが出る!
  • サイト内リンクがおかしい

WP3.3 をマルチサイトで運用してたものを動かすとこういうことになっちゃいます.単一サイトの運用でもサイトのあらゆるところでサーバー環境でつかっていたドメイン情報が使われています.

方法1:DB内のドメイン情報を書き換える

間違ったドメイン情報が書いてあるんだからそれは書き換えればよろしい.ごもっとも.つまりMySQLに格納されたドメイン情報をまるごと置換してやるってことですね.具体的にはSQLをテキストで落として置換ということをやればよろしい,と → http://d.hatena.ne.jp/shunsuk/20081205/1228486751

方法2:HOSTSをいじる

ほんとは1の方がスマートな大人のやり方なんだと思います.でも僕はそれをやらなかった.なぜなら全テーブルを置換するやり方が思いつかなかったし,見るべきテーブルを知らないから!というわけで,ドメインのマッピングを無理やり変えちゃいます.

  1. HOSTS( http://helpdeskgeek.com/windows-7/windows-7-hosts-file/ )を開いて,127.0.0.1 www.your-domain.com のような一行を追加.IPアドレスは,自分のローカルサーバーのアドレスを入れます(127.0.0.1ではダメかも?Vertrigoならタスクバーアイコンを右クリックしたときに出るやつを入れればOK).ドメイン名は自分のものを入れる
  2. Apache の httpd.conf に独自ドメインの情報をいれます.

こんな感じ:

<VirtualHost *:80>
DocumentRoot "C:/WHEREVER-YOU-LIKE"
ServerName www.your-domain.com </VirtualHost>

つまりここでやっていることは,(1)ブラウザなどで www.your-domain.com にアクセスしたら 127.0.0.1 のサーバーに問い合わせるようにして,(2)問い合せを受け取ったサーバーは,www.your-domain.com へのアクセスについて “C:/WHEREVER-YOU-LIKE” ディレクトリのデータを返してやるようにしている.ってことですね(たぶん)

これによって www.your-domain.com として公開されているサイトは(一時的に)見られなくなります.もどすときは,HOSTS に追加した一行の先頭に # をつけてコメントアウトすればよいでしょう.正しいDNSを参照するようになります

おしまい

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福井健策 『著作権とは何か』『著作権の世紀』よんだ

Mar 15 2012

 

  • 著作権とは何か ―文化と創造のゆくえ (集英社新書) [新書]
  • 著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」 (集英社新書 527A) [新書]

著作権の全体像をはじめて学ぶのにはこの2つが一番いいかもしれません.なぜかを説明する前に,少し寄り道をして,一般論から始めさせてください

著作権をはじめとした知的財産権は(1)創作者に対して「独占権」を与えるための制度であって,(2)権利を強くすると創作の自由度を下げ,(3)権利を弱くすると創作のインセンティブを下げる.ほとんどの場合に独占はよくないことですが,少なくとも建前としては,(2:保護)と(3:制限)のバランスを取れば(1:独占)を正当化することができる,というのが今のところ一般的な視点だと思います.すなわち,(2:保護)と(3:制限)のどこかに丁度いいポイントがあって,著作権は適切な権利制限のもとで創作者の創作性を高める制度でありえる.しかしこの話の難しい点は,その丁度いいポイントがどこにあるかは微妙すぎて,著者が著作権制度についてどう思っているかによって,好意的に書かれたり,否定的に書かれたり,まったく違った主張がなされてしまう.なので,この手の本を読む場合には『今自分が読んでいる本がどういう立場なのか』を常に認識しておくのが重要と僕は思います

(2:保護)と(3:制限)のバランスはときに政治的なパワーバランスに左右されてしまうので『著作権はクリエイターを守るために重要だ』という言説に隠された真意にはさらに注意が必要になります(このあたりのことはレッシグの3部作を参照ください)

さて本題.この2冊のいいところは,著者の福井健策さんが法律家でありながら芸術愛好家であるということにあります.やや(2:保護)に寄っているようには感じますが,権利者の過剰な権利保護への圧力に対しては断固として反対する姿勢も読み取れ,非常にバランスのよい思想をお持ちの方とお見受けしました.そのため利点と問題点をバランスよく学ぶことができ,どちらの立場に立たれる人にとっても好感をもって読み進められると思います.

さらに,この2冊の小さな本ではたくさんの具体的な作品(判例ではなく!)の例を参照しながら,著作権制度について学ぶことができます.入門者にとっては,これほどありがたいことはないのではないでしょうか.

個人的にはやや(3:制限)に寄った考え方をもっております(経済学クラスタの人間の多くはそうだと思います)ので,少し反対したい部分もあります.例えば『著作権の世紀』(p. 100)には,ハリウッドの映画会社は著作権制度の恩恵があってこそ1本100億ドルもの制作費をかけた大作を作っても利益を出してやっていける,といった旨の記述がありますが,著作権制度がなければそもそも100億ドルもの制作費はかからなかった訳でしょうから,この部分は著作権制度をサポートする論理としては意味をなしていないと思います.

...とはいえ,もちろん,このようなわずかな瑕瑾をあげつらって批判をするつもりも資格もありませんので,この話はこのあたりに...全体として非常に優れておりますので,信用して読める新書だと思います!!

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Posterous Space を変更

Mar 15 2012

写真用のギャラリーを追加した。エンジニアの人がブログと写真のストリームと分ける使い方をしていたのでそれにならってやってみる。

http://mintjulep-gallery.posterous.com/

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岡田斗司夫・福井健策 『なんでコンテンツにカネを払うのさ?』(2011,阪急コミュニケーションズ)

Mar 08 2012

なんでコンテンツにカネを払うのさ? デジタル時代のぼくらの著作権入門
岡田 斗司夫 福井 健策
阪急コミュニケーションズ
売り上げランキング: 5644

「なんでコンテンツにカネを払うのさ?」のタイトルには

  1. なんで払わないといけないの?
  2. なんでカネなの?

ふたつの含みがあります.そして本書の主張はこの2点に尽きるといっていいと思います.対談を書き起した本書は,著作権法の権利保護と権利制限のバランスを重んじる福井健策さんが,岡田斗司夫さんの斬新な発想にたじたじになるという構図.興味深く読み進められます.

本書は書籍の自炊についての対談から始まります.最近でも問題になったことなので,記憶されている方も多いと思います.

iPad 以後の世界では本だってデジタルで読める方がいいに決まっているし,スキャンしてくれる業者がでてくれば半年近く待ってでも紙の書籍を電子化しようと行列を作ります(ました?).個人で楽しむ分には自由に利用できるのが当然.だったら一番使いやすい形式で持ちたいでしょう?

もちろん,著作権法は他人のために複製をすることも,それによって収益を上げることも認めていませんので,著作権者から訴訟がおこります(「自炊」代行2社にスキャン差し止め要求 東野圭吾さんら作家が提訴).それは彼らに認められた権利だし,それで構わないのだけれど,作家の人たちが

『裁断された書籍について「本という物の尊厳がこんなに傷つけられることはとんでもないことだ」』

などとおっしゃられるのには違和感を覚えます.購入された書物が物理的に裁断されることを著作権法は禁止していないだろうし,私的複製の範囲であればコピーすることも許されているはずです.訴訟で問題にされたのは,裁断ではなく複製代行であるにもかかわらず,感情論によってプラクティカルな議論を置き換えようとしている.そのことに対する違和感だと思います.(弁護団に福井健策さんがおられるようですが,対談はこの訴訟より前に行われたようで,訴訟には触れられていません)

話が逸れました.要するに,所有のあり方が変わり,創作の仕方も変わってきているにもかかわらず,権利を守ることによって大きな利益を得る権利者が旧態依然としたビジネスモデルを維持しようとしている.創作活動の大半は無償で行われているにもかかわらず,小数の有力な権利者のためだけに著作権法が存在しているかのような現状に疑問を投げかけようではないか,ということです.

当然生まれるであろう,著作権のない世界で創作者はどうやって暮らしていけばいいの?という疑問には,そもそも創作活動だけで生計を立てることをあきらめろ,と答えます.そんな人は世界に1000人いれば十分で,その他大勢は別の仕事で生計をたてて創作活動を続ければいいじゃないかと.支援したいファンができれば少しは暮らし向きがよくなるかもしれない.それでも,本格的なマネタイズは無理である...

このような論点はすごく新しいという訳ではないのでしょうし,クリエイターには面白くない発想かもしれません.要するに同人活動みたいなもので満足しなさい,ということですからね.

きわめて極端な確定診断を補足する形で,未来への提言が行われます.岡田さんは最近よく耳にする贈与の経済から少し発想を進めて,お金のやり取りを放棄した世界が語ります.福井健策さんが提唱する全メディアアーカイブ構想 ――これはJASRACみたいな権利管理団体をあらゆるメディアで作りましょうという構想かな―― に日用品のマーケットなんかをくっつける.野菜を買った金額の数%を創作者に寄付する仕組みにする.誰に寄付するかは消費者が選べればもっといい.野菜も寄付もポイントを使えれば税金もかからなくていいじゃないの?

僕が創作者ではない,ということを差し引いても,岡田さんの観点は興味深く,学ぶべきことが多いと感じました.実現可能かどうかは別として,楽しい世界が待っているような気にさせてくれるいい本でした.

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アン・マイクルズ 「冬の眠り」 (黒原敏行訳,早川書房)

Feb 27 2012

冬の眠り
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2012年2月16日現在,Amazon.co.jp にはレビューがまだないようなので,Amazon.com のほうをみる.すごく盛り上がっている.小説そのものよりも小説批評に感心してしまうという始末だった. 著者が詩人ということ,テーマが重厚で重要であることを絶賛したレビューに,詩人であるからこそ重くなってしまう語り,突然ふってわいたような登場人物の必然性に疑問を投げかけるなど,非常に面白く読ませていただきました.このレビューと一連のコメントが特に興味深いです.前作 “Fugitive Pieces”(邦訳「儚い光」) が非常によかったのに期待はずれという内容のもちらほらありました.前作は読んでいないので,それは今度読む.

小説は,アスワン・ハイ・ダムを建設中のエジプトではじまる.水没から救うためにユネスコ主導で行われたアブシンベル神殿の移設を監督するエイヴァリーと妻のジーンの喪失に関する物語.神殿の移設,カナダのセントローレンス湖に沈んだ10の村,ドイツ軍に破壊されソ連支配下のポーランド政府によって復元されたワルシャワ旧市街.3つの象徴的な出来事に触れて,深い喪失の悲しみに暮れる人々の心情が詩的な文章で描かれています

確かに二部のストーリーがやや唐突で無理があるとか,三部の展開が支離滅裂だとかという批判があってもおかしくはないような気がしなくもない.ポーランドのストーリーを挿入するためにはああいった展開に持ち込むしかなかったんでしょう.そういう意味ではもう少しプロットに工夫があってもよかったかな.それでもなお読み手を最後まで離さないというのが,オレンジ小説賞受賞作家の実力だということですかね.いやぁ,とてもよかったですよ.おすすめ

 

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小川明子『文化のための追及権―日本人の知らない著作権』(集英社新書,2011)

Feb 12 2012

文化のための追及権 ─日本人の知らない著作権 (集英社新書)
小川 明子
集英社 (2011-10-14)
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追及権(Droit de Suite)とは,美術作品が転売される際に,転売価格の数%を請求することができる原著作者の権利のことで,ヨーロッパを中心に約50カ国で認められているらしいです.画家のもつ著作権保護が文筆家や音楽家と比較して弱く,文化保護の観点から追及権を日本にも導入しましょう,というのが本書のテーマです.

追及権導入の論拠の1つとして,日本の著作権法では画家に対して不当な権利制限(著作権保護の例外規定)が明記されている,というのがあります:

第四十七条の二 美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者が、第二十六条の二第一項又は第二十六条の三に規定する権利を害することなく、その原作品又は複製物を譲渡し、又は貸与しようとする場合には、当該権原を有する者又はその委託を受けた者は、その申出の用に供するため、これらの著作物について、複製又は公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)(当該複製により作成される複製物を用いて行うこれらの著作物の複製又は当該公衆送信を受信して行うこれらの著作物の複製を防止し、又は抑止するための措置その他の著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定める措置を講じて行うものに限る。)を行うことができる。

美術品であれなんであれ,著作権で保護された創作物の複製の作成や,一般への公開には著作者の許可が必要ですので,画集が発行される場合には著作者に著作権料が支払われます.しかしながら,美術品の所有者は上述の例外規定によって,一定の条件さえ満たせば著作者に断りなく複製の作成,公衆送信,自動公衆送信のための送信可能化を認められています.これは,美術品のオークション(インターネットオークションを含む)出展者が美術品を撮影するなどしてカタログに出展品情報を登録することを認めるための例外規定とされているのですが,オークションでは,カタログにかなり力を入れていて,画集と変わらないクオリティでカタログが作成されており,画家は著作権料をとりっぱぐれているのではないか.追及権を認めない上に,例外規定が強く,著作者の権利が不当に制限されている.というのが,著者の主張です.「フランスの国立美術館を統括する組織RMNが海外拠点として日本に設けた会社に勤務」されていた著者ならではの重要な視点と言えるのかもしれません.

そこで,日本でも追及権を導入して画家の権利を保護しよう.という風に議論が進められるのですが,これは本当に正しい方向でしょうか?第四十七条の二の権利制限が不当に強いのであれば,こちらを改良する方が重要ではないかと思います.追及権の性格上,当該美術作品にすでに買い手がついていて,さらに転売市場における取引が成立しない限り徴収料は発生しません.これでは,芸術家が芸術作品を生み出すインセンティブ強化のための根拠として弱すぎるように感じるからです.1人目の買い手を見つけるのに苦労している芸術家がたくさんいるのはどこの業界でも同じでしょうから,複製物の販売で潤っている映画・音楽・出版業界と同様の「当たれば大儲け」できる制度を美術品の世界でも作りましょうというのでは富が一極集中する現状を拡大再生産するだけのように思えてなりません.

このような批判はやはり受けておられるようで,売れている芸術家にしか追及権料は支払われないだろうという批判に対して,イギリスでは追及権料支払い対象を拡大し,対象者が倍増した.という事例を挙げます.以下,166頁より抜粋:

追及権はすでに著名で裕福といえる芸術家のみが潤うものであり、無名で貧しい芸術家にはなんら影響はないのではないかという議論があることも確かです。この点については、イギリスの事例から一つの結論が見えてきます。イギリスは、追及権料の支払い対象となる取引の下限を欧州指令で示された3000ユーロではなく、1000ユーロに設定しました。これによって、保護対象となる芸術家数は倍増したといわれています。
このことは、一つの作品に数万ユーロ、数十万ユーロの高値がつく芸術家は一部にすぎず、多くの芸術家の作品が1000〜3000ユーロの範囲内で取引されているとい事実を示しています。それでも彼らの生活は、追及権料の支払いが行われることによって大きく変化したと思われます。次の作品の制作費や生活費を稼ぐのに必死になっている芸術家であっても、以前に手放した作品の追及権料によって、その苦境がいくらか緩和されたはずです。

これでも売れている芸術家の対象を拡げただけで有効な反論になっていません.新制度への移行とともに負の効果も発生しているはずですので,そこを伏せた本書の記述は説得力にかけているように思います.取引量,取引価格ともに優位な減少がなかったことを確認した上で,管理コスト増加の程度が画家の暮らし向き向上と釣り合っているか検討する必要があるでしょう.(おそらくその手の実証研究は探せばすでにあると思いますが)

もうひとつ,二次創作に対して認められている原著作者の権利に関連して,追及権に不満を感じました.文化の振興を目的とするのであれば,二次創作に対して権利保護を強くしすぎないということが重要でしょうから,著作権と共に続く永続的な追及権というアイデアは創造のコストを不当に高くする要因をひとつ増やすことにならないでしょうか

芸術家に寄り添って書かれた本書は,絵画・彫刻などの複製不可能な芸術作品のための著作権制度見直しに対して興味深い提案をされています.読了後の意見は追及権には懐疑的な立場ですが,芸術家の保護にはやぶさかではないので,より説得的な次回作を期待したいと思います.

 

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